DX戦略
制定日:2026年7月29日/事業者:Move fit 戸畑(代表 村田 幸俊)
Move fit 戸畑は、理学療法士と鍼灸師が連携して「整えてから鍛える」身体づくりを提供する、北九州市戸畑区の小規模事業者です。 私たちは、専門職が事務作業ではなく人と向き合う時間を確保するために、デジタル技術の活用を経営の中心に据えています。 本ページでは、当事業の経営ビジョン、デジタル技術を活用する戦略、その推進体制と人材の考え方、 ITシステムの整備方針、および戦略の達成度を測る指標を公表します。
1. 経営ビジョンとビジネスモデルの方向性
経営ビジョン
「根拠ある変化を、すべての人へ」——これが当事業の掲げるビジョンです。
整え(Balance)、鍛え(Build)、なりたい自分へ(Become)。この3つのBを、理学療法士×鍼灸師の代表が一貫して設計します。 痛みを整えることと体を鍛えることを分けずにひとつの流れで提供できることが、当事業の中核的な価値です。 40代・50代、そしてその先の年代の方が、年齢を理由に諦めることなく動き続けられる状態を、根拠をもって支えることを目指しています。
社会・競争環境の変化がもたらす影響(リスクと機会)
- リスク:北九州市は高齢化が進み、介護・在宅医療の担い手不足が事業継続上の最大の制約になりつつあります。理学療法士・鍼灸師・介護職といった専門職は、記録・保険請求・報告書作成などの事務作業に時間を奪われ、本来の専門業務に充てられる時間が減少しています。
- リスク:療養費(保険)請求や同意書の期限管理は制度が複雑で属人化しやすく、デジタル機器の扱いに不慣れな担当者には引き継ぎが困難です。担当者1名に依存する体制は、その1名が離脱した時点で業務が止まるという構造的な脆弱性を抱えています。
- 機会:生成AIの実用化により、資本もIT人材も持たない小規模事業者が、自らの業務に合わせた仕組みを自分で設計・構築できるようになりました。外部ベンダーに要件を伝える工程が不要となり、現場の当事者が直接システムをつくることが可能になっています。
- 機会:同じ課題は、地域の介護施設や同業事業者も等しく抱えています。自らの課題を解いた仕組みは、そのまま地域の他事業者にも役立ちます。
ビジネスモデルの方向性
当事業のビジネスモデルは二階建てです。一階は、施術・運動指導という本業。 二階は、その本業を回すために内製した業務システムを、地域の介護施設・医療機関・同業団体へ提供する取組です。 現時点で後者はすべて無償で提供しており、連携関係・紹介という関係資産に転化させています。 将来的には、提供先の広がりに応じた有償展開も選択肢として検討します。
強みは、現場の当事者が自ら設計するため要件定義の工程が不要で、着想から実装・現場投入までを短期間で回せる点です。 弱みは、その設計・実装が代表一人に集中している点にあります。この弱みに対しては、後述するとおり、 作り方そのものを手順として明文化・蓄積することで、属人性を計画的に低減させていきます。
2. デジタル技術を活用する戦略
戦略の骨子
当事業のDX戦略は「一度入力すれば、必要な書類がすべて出てくる状態をつくる」ことに集約されます。 同じ情報を何度も転記する作業を、事業から取り除くことが目的です。
具体的には、Googleカレンダー(訪問・施術の予定)とGoogleスプレッドシート(患者台帳・同意書の期限管理)を 事業データの中心に据え、そこから施術回数の集計、療養費請求、領収証兼明細書、 ケアマネジャー・主治医・ご家族向けの月次報告書までが連鎖して生成される構成としています。
データの位置づけと利活用
カレンダー、スプレッドシート、各アプリに蓄積される記録を、当事業は「事業の資産」と位置づけています。 どのアプリがどのスプレッドシートのどの列を参照しているかを一覧化した連携台帳を整備し、 仕様変更のたびに更新することを内部ルールとしています。これにより、データの所在と依存関係を常に把握できる状態を維持しています。
既存業務の変革
予約受付、問診、施術記録、保険請求、月次報告、シフト作成、送迎計画といった業務を順次デジタル化し、 2026年7月時点で内製した業務アプリ・情報サイトは41本に達しています。 いずれもインストール不要のWebページとして提供し、利用者が新しい操作を覚える負担を最小限にしています。 ただし当事業の変革の中核は、アプリの本数そのものではありません。 これらをカレンダーやスプレッドシートと結び付け、予定の登録から請求・報告までを一続きの流れにした点にあります。
新たな価値の創出(地域への展開)
自社向けに構築した仕組みを、地域の事業者へ提供しています。2026年7月時点で、 介護事業所2か所、医療機関1か所、同業の職能団体1団体(会員19名)にご利用いただいています。
提供している仕組みは、希望休の集約、送迎表の作成、公用車のセルフチェック、 法定研修の動画受講と実施記録、利用集計レポート、日々の健康記録、保険請求の確認、 会員向けの情報配信、受診予約と案内文の作成など、いずれも現場の事務負担が大きい業務を対象としたものです。 提供はすべて無償で行っており、導入後も要望に応じて改修を続けています。
3. 戦略を推進する体制と、人材の育成・確保
推進体制
当事業は、代表と、ジムでの運動指導を専従で担当するスタッフ1名の計2名を中心に運営しています。 スタッフは指導に加えて、書類作業の一部も担当しています。 このほか、パーソナルトレーニングのご予約が入った際に、理学療法士1名へ業務委託で対応を依頼しています。 専任のシステム部門を置ける規模ではないため、生成AIを開発の実務担当として体制に組み込むという方針を採っています。 役割と権限は次のとおり定めています。
| 役割 | 担当 | 責務 |
|---|---|---|
| DX推進責任者(CDO兼務) | 代表 村田 幸俊 | 何を作るかの決定、予算配分、現場での受入判定、対外的な発信。経営判断と一体で行う |
| 設計・実装 | 生成AI(開発支援ツール) | 代表の指示に基づく設計・実装・改修 |
| 動作確認 | 代表およびスタッフ | 作った当事者以外の目で、実際の業務の流れどおりに動くかを確認する |
| 受入確認 | 提供先の職員 | 実際の業務での使用による検証と、使いにくい点の指摘 |
属人性を下げるための仕組み
- 作業手順を文書として明文化し、同じ品質で再現できる状態を維持する
- アプリを変更した際は、変更内容と連携先を必ず台帳に記録することを義務とする
- 失敗や手戻りが発生した場合は、原因を確認したうえで「次回以降の規則」として文書化する
求める人材とスキルの定義
当事業がDX推進に必要とする能力は、プログラムを記述する技能ではなく、 自らの業務を第三者に正確に説明・分解できる力であると定義しています。 生成AIを用いる場合、成果物の品質は指示の正確さによって決まるためです。 経済産業省・情報処理推進機構の「デジタルスキル標準」を参照し、当事業に必要な範囲を選定します。
育成・確保の計画(数値目標)
| 項目 | 現状(2026年7月) | 目標(2027年3月) |
|---|---|---|
| 業務アプリを自ら改善・運用できる人材 | 1名(代表) | 2名以上 |
| 保険請求・申込等の主要事務を単独で実施できる人数 | 1名 | 3名以上 |
| 提供先職員向けの操作説明 | アプリの完成ごとに実施 | 年4回以上 |
提供先には、アプリが完成するたびに代表が直接操作を説明し、実際に使っていただいたうえで、 使いにくい点をその都度うかがって改修しています。作って渡して終わりにせず、 現場で使える状態になるまで一緒に整えることを、育成の実務そのものと位置づけています。 あわせて代表は、理学療法士・作業療法士向けの研究会を運営し、医療・介護職の交流会も主催しています。
4. ITシステム・デジタル技術活用環境の整備方針
従来の状態
紙の記録、手作業のExcel、口頭・メッセージでの連絡が中心で、同じ情報を複数の帳票へ繰り返し転記していました。
現在の構成
自前のサーバーを保有せず、静的なWebページ(Cloudflare Pages)、Google Apps Script、Googleスプレッドシートを 組み合わせた構成を採っています。保守すべき対象を意図的に少なくすることで、 小規模事業者でも技術的負債を抱え込まずに運用できる状態を維持することが狙いです。
- 全アプリのソースを一箇所で一元管理し、所在が分からなくなる状態を防ぐ
- 連携台帳により、アプリ間・データ間の依存関係を可視化し、個別最適による複雑化を回避する
- 利用者側にインストールを求めない構成とし、端末や環境の違いによる不具合を減らす
今後の整備方針
- アプリを開く際の本人確認を、合言葉からGoogleアカウントによるログインへ統一する。2026年7月時点で業務アプリ6本に導入済みで、あらかじめ登録した4アカウントのみが開ける状態としている。残るアプリも順次移行する(2026年度内)
- 個人情報を扱うページは、対象者ごとに閲覧権限を分離する設計を継続する
- 「デジタルガバナンス・コード」および経済産業省・情報処理推進機構が公開する指標を用いて、 自社のITシステムの現状と課題を定期的に自己点検し、その結果を戦略の見直しに反映する
5. サイバーセキュリティへの取組
当事業は利用者の健康に関する情報を取り扱うため、情報漏えいは事業継続に直結する経営リスクであると認識しています。 その責任は代表が負い、対策の方針・体制・実施状況は 情報セキュリティ基本方針に定めて公表しています。
6. 戦略の達成度を測る指標
当事業は、DX戦略の達成度を次の3系統の指標で測定し、月次で記録・確認します。
指標1:事務作業時間の削減
選定理由:本戦略の第一の目的は、専門職が人と向き合う時間を確保することにあります。 削減された事務時間は、そのまま施術・指導に充てられる時間となるため、目的に最も直接的に対応する指標として設定しました。
| 対象業務 | 測定方法 | 目標(2027年3月) |
|---|---|---|
| 療養費請求、訪問予定表の作成・共有、領収証兼明細書の発行の3業務 | 1件あたりの所要時間 × 月間件数で月間作業時間を算出し、導入前との差を記録する | 導入前は合計で月13時間(年156時間)。2027年3月までに50%以上削減 |
指標1-2:導入前は実施できていなかった業務の実施
選定理由:作業時間の短縮だけでなく、これまで着手できなかった業務に取り組めるようになったことも、 本戦略の成果です。ケアマネジャー・主治医への月次報告は、導入前は作成できていませんでした。
| 業務 | 導入前 | 現在 |
|---|---|---|
| 月次施術報告書(ケアマネジャー/主治医/ご家族向け) | 0通/月 | 10通以上/月 |
指標2:業務の属人性の解消
選定理由:小規模事業者にとって、特定の担当者しか実施できない業務が残ることは最大の事業継続リスクです。 「実施できる人数」を指標とすることで、仕組みが本当に誰にでも使えるものになっているかを検証できます。
| 対象 | 現状(2026年7月) | 目標(2027年3月) |
|---|---|---|
| 保険請求・利用申込などの主要事務を単独で実施できる人数 | 1名 | 3名以上 |
指標3:地域への提供の広がり
選定理由:当事業のビジネスモデルの二階部分にあたる「地域への提供」が実際に機能しているかを測るための指標です。
| 項目 | 現状(2026年7月) | 目標(2027年3月) |
|---|---|---|
| 内製した業務アプリ・情報サイトの数 | 41本 | 50本 |
| 仕組みを提供している事業所数 | 4事業所(会員団体1を含む) | 6事業所 |
進捗の把握と見直し
各アプリの記録はスプレッドシートに自動的に蓄積されるため、件数・利用状況は随時確認できます。 代表は月次でこれらの指標を確認し、四半期ごとに戦略そのものの妥当性を見直します。 見直しにあたっては、デジタル技術の動向および自社ITシステムの現状に関する自己点検の結果を踏まえます。
7. 代表からのメッセージ
私は理学療法士であり鍼灸師です。システムの専門家ではありません。 それでも、目の前の業務を自分で作り替えることができました。
介護や在宅医療の現場は、人が足りていません。そこで働く専門職の時間が事務作業に消えていくことは、 地域全体にとっての損失だと考えています。高価なシステムを導入できる事業者ばかりではありません。 だからこそ、資本もIT人材も持たない小規模事業者が自らの手で現場を変えられるという事実を、 実例として示し続けることに意味があると考えています。
当事業がつくった仕組みは、地域の介護施設や同業の方々に提供しています。 仕組みそのものだけでなく、その作り方も含めて開示していくことが、 北九州市の医療・介護の現場全体の生産性向上に、最も直接的に貢献できる方法だと考えています。
Move fit 戸畑 代表 村田 幸俊
理学療法士・鍼灸師
8. 本ページについて
本ページは、経済産業省「デジタルガバナンス・コード」に沿って、当事業の経営ビジョン、 デジタル技術を活用する戦略、推進体制と人材の考え方、ITシステムの整備方針、および成果指標を公表するものです。 内容は事業環境の変化および指標の実績に応じて改定し、改定の際は本ページで公表します。
本ページに関するお問い合わせ:
Move fit 戸畑(代表 村田 幸俊)
〒804-0041 福岡県北九州市戸畑区天籟寺1丁目2番50号
電話:090-2394-9552/メール:[email protected]